様々な病気について(動脈硬化)
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動脈硬化とは

身体の隅々まで栄養素などを運び、細胞や臓器が生命活動を維持していくうえで大変重要な役割を果たしている血管ですが、この血管が老化し、硬くなるのが動脈硬化という病気です。

ゴムのホースを思い浮かべてください。新品のゴムホース、つまり健康な血管は柔らかく、弾力性がありますが、長い間風雨にさらされて老朽化したホースは、硬く弾力性がないうえにヒビが入ってしまいます。血管がこのような老朽化した状態になることを動脈硬化といいます。

動脈硬化には『 粥状動脈硬化 』と『 細動脈硬化 』があります。

粥状動脈硬化

動脈壁に血液中の成分が染み込んで次第に付着し、粥のような塊ができ、動脈の内腔が徐々に狭くなってくる動脈硬化です。

心臓から出てすぐの大動脈、心臓の心筋に血液を供給している冠状動脈や、脳へ血液を供給している内頸動脈・椎骨脳底動脈・脳動脈、腎臓へ血液を供給している腎動脈、脚へ血液を供給している腸骨動脈・大腿動脈など、太い動脈に起こりやすいものです。

細動脈硬化

直径100~200ミクロンという細い動脈に、壊死や動脈瘤ができる動脈硬化でで、脳・腎臓・目の網膜などの動脈に起こりやすいものです。高血圧が長期間続いている人に起こりやすく、食塩の摂取量が過剰で、さらにタンパク質と脂肪の摂取量の少ない食生活を続けていると細動脈硬化が進行し、脳出血や多発性の脳梗塞を誘発します。

人間の体内でなぜ動脈硬化が起こるのかは、まだ完全に判明していません。今日までにわかっているのは、動脈硬化はすでに10代から始まり、40歳を過ぎるころにはほとんど例外なく症状が出てくるようです。さらに動脈硬化が進行すると、狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患や、脳出血、脳梗塞など、生命に関る病気を引き起こします。

動脈硬化の原因と症状

動動脈硬化は、合併症の症状があれば容易に診断できますが、症状がない場合は診断が難しいのです。そこでさまざまな検査によって、多角的な診断を行います。ここではそれらの検査でいったい何を調べるのか?ひとつずつ解説していきましょう。

問診
日ごろ気になる症状がないか聞かれます。その際は、動脈硬化を進行させる危険因子、主に生活習慣などを詳しく話すことが大切です。
診察
肥満の程度、脈拍数、不整脈の有無、心臓の雑音、頸部や下腹部の雑音など調べます。
尿検査
糖分が多ければ、動脈硬化の危険因子である糖尿病の存在が疑われます。また、タンパクが多いと腎障害の可能性もあります。
血圧検査
高血圧症は動脈硬化の重要な危険因子のひとつですが、逆に動脈硬化が進むと、血圧が高くもなります。
血液検査
血液中の脂肪、尿酸、糖分の量を測定し、高脂血症、高尿酸血症、糖尿病があるかどうかを調べます。また、血小板などの血液凝固因子の異常や、多血症の有無も検査します。
眼底検査
細動脈硬化症、高血圧症、糖尿病が存在すると、眼底の網膜の動脈に変化が起こります。網膜に動脈硬化が見られる場合は、ほぼ同程度の細動脈硬化が脳の動脈にも起こっている可能性があります。
心電図
狭心症、心筋梗塞、不整脈があると、心電図に特有の波形が描かれます。階段を昇り降りした後に心電図をとる運動負荷試験を行うと、顕著に疑わしい変化が出てくることがあります。
胸部・腹部X線検査
大動脈の硬化、心臓肥大、腎臓の萎縮などを比較的簡単に知ることができます。
超音波検査
心臓や大動脈の形態や、働き、血栓や粥腫の状態、血流の速さや、血管径の動きなどを調べます。
CTスキャン
脳や腎臓などの臓器の異常を見つけ出すのに有効です。とくに脳では出血と梗塞の識別が簡単にできます。最近では心臓内の血栓や、大動脈の硬化の状態を見るのにも使われています。
脳波・脳波速度
脈拍が身体の末梢まで伝わる状態を調べるもので、動脈硬化があると脈波の形に変化が見られ、伝播速度も速くなります。
血管造影法
脈にカテーテルを挿入し、造影剤を注入して、心臓の動きや脳への血液の流れ、動脈壁の状態などをX線で映し出します。

動脈硬化の危険因子

動脈の硬化は、年を追うごとに誰にでも多少は起こるものです。しかし、その進行を早める要因を排除することが予防につながるので、大切といえるでしょう。では、その危険な要因、危険因子と呼ばれるものが何なのか挙げてみましょう。

高血圧症
高血圧症が存在すると、動脈壁に絶えず高い圧力がかかり、内膜が傷つきます。そしてそれが治り、再び傷つきくといったことを繰り返すことで粥腫(アテローム)ができやすくなります。また、細動脈が痙攣収縮するために小動脈瘤ができてきます。
コレステロール
血中のコレステロールが高いことは、粥状動脈硬化の最大の危険因子です。コレステロールが動脈壁に染み込むことによって、粥腫を発生させます。肥満、糖尿病、肝臓病などの症状として起こることもありますが、高コレステロール血症になりやすい体質の人もいます。
中性脂肪(高トリグリセライド血症)
高トリグリセライド血症の人は、動脈硬化を予防するHDLコレステロールの値が低いことだけでなく、糖尿病や肥満を合併したり、尿酸値が高くなっています。つまり、動脈硬化を発生、進行させる危険因子が加わりやすいのです。
糖尿病
ニコチンが血小板を凝集させ、動脈の中膜を増殖させたり、血管壁に血液中の脂肪が沈着しやすくなる影響があります。また、HDLコレステロール値を低下させる、血液の粘度を高めて固まりやすくする、さらに血管を収縮させて脈拍数を増やしたり、血圧を上昇させるなどの悪影響があります。
ストレス・性格
ストレスが続くと、動脈硬化の危険因子となる高血圧症や、高脂血症、糖尿病を誘発する恐れがあります。また、血液が固まりやすくなり、血栓ができやすくなります。攻撃性の強い性格の人などは、穏和な性格の人に比べてストレスを受けやすく、血圧が上がり、糖尿病、高脂血症などを悪化させます。さらに、狭心症の発生率も穏和な人に比べて7倍も高いといわれています
運動不足
運動不足が続くと血液中の中性脂肪の値が高くなり、動脈硬化を予防するHDLコレステロールの値が低くなるほか、肥満を助長し、動脈硬化を発生、進行させます。
アルコール・砂糖
日本酒にして1日1合程度の晩酌であれば、HDLコレステロールの値を高めますが、多量の飲酒は中性脂肪の値を高め、脳卒中の発生率も高くなります。また、砂糖も1日30g以上摂取すると中性脂肪が高くなります。

動脈硬化の治療法

動脈硬化は年齢を重ねるごとに進行していきます。この進行を遅らせることが予防であり、治療でもあります。そして大切なのは、動脈硬化を進行させる要因、危険因子を排除していくことです。危険因子の数が多ければ多いほど、また期間が長いほど、脳卒中や心筋梗塞などの合併症を起こす危険性が高くなります。

まず生活習慣を改善することによって、危険因子をひとつずつ減らしていくことが重要です。では、何をどのようにして減らすのかを以下に説明していきましょう。

食事療法

もし肥満体の人であれば1日のカロリー摂取量に注意して、食べ過ぎないようにすることが大切です。肥満は動脈硬化の危険因子であると同時に、高血圧症や高脂血症、糖尿病の危険因子でもありますから注意が必要です。逆にいえば標準体重に戻すことができたなら、それらの病気を解消できる場合も少なくありません。

腎機能が低下していない限り、タンパク質をとりましょう。大豆などの植物性タンパク質に含まれるアルギニンや、白身の魚に含まれるタウリンという物質は、動脈硬化を予防する効果があるといわれています。

動物性脂肪を含む食品を多く食べるとLDLコレステロールが増えます。これは粥状動脈硬化症に大きく関っていますので、卵やレバー、生クリームやバターを食べ過ぎないようにしましょう。
肉の脂身やバター、生クリームには動脈硬化を促進する飽和脂肪酸が多く含まれているので、逆に不飽和脂肪酸を多く含む植物油や、魚の脂肪を比較的多くとるようにしましょう。しかし、不飽和脂肪酸のとり過ぎも逆によくないので、注意が必要です。

ニシンやイワシ、サバなどに含まれる多価不飽和脂肪酸は、中性脂肪やコレステロールを低下させる働きがあるうえ、血小板の働きを抑えて、血液が固まりにくくすることもわかっています。

食物繊維は小腸でのLDLコレステロールの吸収を阻害し、排出する働きがあります。ミカンを薄皮ごと食べたり、ゴボウなどセルロースの多い野菜類、またペクチンやリグニンなどを含む海藻類、さらにはキノコ類などを十分にとるようにしましょう。

糖分のとり過ぎもよくありません。1日30g以上をとると中性脂肪が高くなり、動脈硬化を予防するHDLコレステロールが低下してしまいます。また果物は身体にいいとされていますが、意外に果糖が多いので注意が必要です。

塩分のとり過ぎは血圧を上昇させて細動脈硬化を招くほか、脳出血や胃ガン、腎臓病などを起こしやすくします。麺類のスープや、漬け物を残すようにするなど心がけ、塩分の摂取量を控えるようにしましょう。

適量の飲酒はHDLコレステロールを増やし、動脈硬化の予防にもなりますが、高血圧症や細動脈硬化の人が深酒を続けると脳卒中を起こしやすくなりますから、飲み過ぎに注意しましょう。日本酒なら1日1合、ビールなら1本、ウィスキーならダブル1杯程度を、タンパク質を中心としたつまみを食べながら飲むことをおすすめします。

運動

適度な運動は血管を新生する刺激にもなり、HDLコレステロールを増加させ、動脈硬化そのものの予防はもちろん、動脈硬化の危険な要因である高血圧、糖尿病、高脂血症などの病気の予防にもなります。

食前の運動は食欲を増進し肥満の原因にもなるので、食後20分~1時間後に、1分間に80~100mのペースで30分ほどのウォーキングなどがいいでしょう。

しかし、寒い日の早朝などは血圧を上昇させますので、狭心症や心筋梗塞、脳卒中の危険があるほど動脈硬化が進行している人は、医師の指示に従って運動をしましょう。

薬物療法

食事療法や、運動で危険因子を避けても動脈硬化の進行を抑えられないときは、薬物療法もいっしょに行います。逆に動脈硬化を根本から治療する薬ではありませんから、薬を利用しても危険因子を避ける生活を適切に守らなければ治療の効果はあがりません。

  • 降圧剤
    粥状動脈硬化や、細動脈硬化の危険因子である高血圧を治療する薬です。降圧剤を使用している時は、血圧が下がったからといって止めてはいけません。医師の指示に従いましょう。
  • 脂質代謝改善剤
    高脂血症を改善する目的の薬で、正しい食事療法を行っているのに中性脂肪の値が下がらない場合に使用します。
  • 血管拡張薬
    脈硬化を起こしている動脈の内腔を広げて、組織への血液の流れをよくすることを目的とした薬です。動脈硬化により循環器系の病気のある人には必要な薬です。
  • 抗凝固剤・抗血小板剤
    動脈硬化を起こしている人の血液は固まりやすく、血栓ができやすい状態になっています。このような血液の状態を改善させるのが抗凝固剤です。また、血小板が粘着したり、凝集したりするのを予防するのが抗血小板剤です。
  • 組織代謝賦活剤
    動脈硬化のために著しく血流が減少した末梢組織には、慢性的な栄養不足が見られます。このような末梢組織に活力を与え、組織の代謝を促進するのがこの薬です。

そのほかの治療

  • 喫煙は、動脈硬化の危険な要因のひとつであるうえに、狭心症や、心筋梗塞を起こす危険性を高くします。また、肺ガン、咽頭ガン、食道ガン、胃ガンにも深く関係しています。まさに『百害あって一利なし』。喫煙をしている方はやめることをおすすめします。
  • ストレスは動脈硬化の危険因子ですが、ストレスそのものが問題というよりも、ストレスに対する身体の反応が動脈硬化を促進していると考えられています。現代ではストレスを完全に避けることは、ほぼ不可能に近いと思われますが、まず無用なストレスを作らないことです。間違った医学知識を信じてビクビクしたり、怒りっぽく、ほかの人との協調性を欠く行動をしていると、ストレスは増えていきます。ゆったりとした気分で毎日を過ごしたり、運動や趣味などで解消することを心がけましょう。

動脈硬化の予防法

動脈硬化の危険因子は様々ありますが、そのなかでも大きな影響を及ぼしているのが活性酸素とLDLコレステロール、いわゆる悪玉コレステロールです。これらふたつが結びつくことによりって悪玉コレステロールが酸化し、動脈硬化を助長する結果を招きます。そこで、これらが結びつくことを妨げられれば、動脈硬化の予防に繋がります。

つまり、活性酸素と悪玉コレステロールが結びつく前に、活性酸素と結びつく成分があればいいのです、その役割を果たしてくれるのがポリフェノールです。

ポリフェノール

花びら、果実の皮や種、茎など、光合成を行う植物に存在します。ポリフェノールは種々様々な色彩の花びらを作る成分であり、昆虫などの外敵によって分泌された毒を無毒化させる抗酸化物質です。

ポリフェノールとは、化学構造中にフェノール水酸基が3個以上含まれる物質の総称で、約4000種類あります。では、代表的なポリフェノールがどんな食品に含まれているかをみてみましょう。

  • フラボノイド:緑茶、ブドウ、ナス、ソバ
  • カテキン:緑茶
  • タンニン:カキ、緑茶、赤ワイン
  • ケルセチン:赤ワイン、ココア、タマネギ、ブロッコリー
  • アントシアニン:ブルーベリー、イチゴ、ナス
  • イソフラボン:大豆、そら豆などの豆類

赤ワインをよく飲んでいる欧州の人たちは喫煙率も高く、また肉やバターなどの動物性脂肪をたくさんとるので、動脈硬化を誘発させる因子が高いことがわかります。しかし、アメリカなどに比べると動脈硬化が進行した脳卒中や心筋梗塞の割合がはるかに少ないデータがあります。日本人も緑茶を多く飲んでいますが、脳卒中や心筋梗塞などは赤ワインを飲んでいる地域の人々に比べるとまだまだ多いのが現状です。それはなぜでしょうか?じつは、赤ワインには緑茶の4倍もの抗酸化作用があるからなのです。

※注意
ポリフェノールの摂取に関して、赤ワインからとるのも有効だといえますが、健康保持のためであれば、まずは広く野菜類からとるのがいちばんだといえるでしょう。また、アルコールの取りすぎは禁物で、1日ワイングラス2杯程度が適量です。実際、フランス人には動脈硬化は少ないですが、肝硬変、膵臓病での死亡率が世界でもっとも高いので、赤ワインがお好きな方は十分ご注意を。

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