漢方薬はがんにどのように作用するのでしょうか
がん治療での漢方の役割

漢方薬はがんに対して、それぞれの作用を担う漢方生薬を配合し処方した漢方薬の複合作用によって身体全体の自然治癒力や免疫力を高め、生薬の持つ抗がん作用の働きで、がん治療の効果を高めていきます。

がん治療に漢方を用いる目的

がん治療に漢方を用いる目的として、主に下記の3つをあげることができます。

  1. 進行がんに対する代替医療
  2. 標準治療(手術・化学療法・放射線治療)実施後の再発予防
  3. 抗がん漢方によるがん細胞の抑制

漢方薬の特徴として、天然生薬の配合、処方により、その複合作用によってがん治療効果を高めます。さらに、がんの標準治療(手術・抗がん剤・放射線治療)と比べて副作用が少なく、身体全体の免疫力を高めながら症状を改善していく働きがあります。

漢方は身体にどのように作用するのか

漢方薬の特徴は、身体の一部分にはたらきかける西洋医薬とは異なり、身体全体に働きかけ作用するというところにあります。

漢方薬は、西洋医薬の抗がん剤のように、局所的にがん細胞を殺傷するといった劇的な効果は期待できません。しかし、抗がん剤は劇的な効果がある一方で、がん細胞と一緒に正常な細胞までも殺してしまい、その結果として免疫力を落とし、さまざまな副作用が生じるリスクを持っています。西洋医薬に比べて天然生薬が成分の漢方薬では、身体の免疫力を高めて、身体全体に作用して効果を発揮させることが特徴です。

がん治療における漢方の位置づけ

国立がんセンターによる2015年の予測がん罹患数は98万人以上となり、がん死亡者も37万人と年々右肩上がりに増加する傾向となっています。一方で、がん診療連携拠点病院では、進行再発がん治療の標準化に伴い、早期の段階であっても治療の限界性を患者や家族に告げるようになってきました。さらに、末期がんとなると治療法がないと見放されるのが現状です。しかし、患者・家族としては何らかの治療を継続することを望んでおり、次なる選択肢として漢方療法の位置づけが再認識されるようになってきました。

漢方薬は、西洋薬と比較して各生薬がきわめて長い経験と臨床に基づいて安全性と有効性が実証されてきており、大学病院などでも取り入れられています。こうしたことから、一部では西洋薬と同等の評価基準を用いるべきではないかと考えられています。また、最近では、人間が本来持つ自然治癒力・免疫力を高め、がんを克服し、心身ともに健康な状態を作ることを目的とする、身体、心、生命の人間まるごとを診るホリスティック医学を導入する医療機関が増えてきました。このような背景から自然治癒力・免疫力を高めるはたらきのある漢方が、がん治療において注目を集めているのです。

なぜ、がん治療に漢方が求められているのか

がん治療において漢方が求められている理由には次のようなことがあげられます。

  1. 西洋医学の壁
    化学療法をはじめとするがんに対する西洋医学の進歩にもかかわらず、依然として再発・転移による死亡を阻止することが難しく、克服すべき大きな課題となっています。さらに、合成化学薬品のもたらす劇的な治療効果に対して、その重篤な副作用(免疫抑制あるいは毒性)が逆に疾患の完治、あるいは根絶を困難にしていることも大きな問題です。そこで、人間が本来的に持つ「自然治癒力」を引き出し、「免疫力」を高める治療法として、伝統医学や漢方による代替医療が、注目を集めています。
  2. QOLの向上
    漢方をがん治療に用いることで、標準治療の副作用等を軽減し、患者のQOL(Quality of Life=生活の質)を高める働きがあることが分かっています。西洋医学的な治療による諸症状や副作用を軽減する働きがあり、各種療法を継続するために貢献できることが明らかになっています。
  3. 広まる「統合医療」の考え方
    病気の治療には、症状を改善する「対症療法」と根本となる原因を取り除く「原因療法」があります。これまで多くの医療機関などで実践されてきた医療は、「対症療法」を中心とした西洋医学が基本でした。
    しかし、近年の世界的な医療の潮流は、単に病気だけではなく、人間の心と身体の全体を診る「原因療法」を中心とした漢方に代表される伝統医学や代替医療も取入れるべきであるという「統合医療」の考え方に大きく移行してきています。「統合医療」とは、西洋医学と代替療法の二つの療法を統合することで、お互いの特性を最大限に発揮することを目的として治療を行うことです。

漢方による緩和ケアについて

緩和ケアに対して「がん治療ができなくなった患者に対する医療」「終末期に受けるもの」といったイメージを持っている方が少なくないかもしれませんが、2007年4月1日に施行された「がん対策基本法」により、緩和ケアの考え方も大きく変わりました。

緩和ケアとは、がんと診断された早期から、治療と並行して行われるものであり、「がん治療に伴う副作用、合併症の緩和」「がんの痛みやがんの症状の緩和」の2つに大きく分けられます。がん治療での漢方の目標と、症状を緩和する緩和ケアの目標は一致しており、漢方を使うことによって緩和ケアの選択肢を増やし、患者のQOL向上に役立つと考えられています。

がん再発予防としての漢方

治療によりがんが治っても、今度は再発の心配が出てきます。がんの種類や病期によって再発率は変動しますが、いずれにせよ日々の生活の中で再発防止を心がけなくてはなりません。がんの再発防止予防としても漢方が有効になります。漢方薬を服用することで体内の免疫力を高めると同時に、血液の循環や新陳代謝の改善効果が期待できます。また、漢方により冷えを改善することもがんの再発予防には効果的です。

末期がん治療と漢方

末期がんによる余命宣告をされてから、漢方治療によって症状が回復した例は数多くあります。漢方治療によりQOLを高めることで苦痛が緩和され、最後まで人間らしい生活の質を保って生きることができるようになることは、患者さんとご家族にとっても非常に大きな意味があります。何も治療法がなく希望を失うことは、精神的に大きなマイナスとなります。生きる希望を持ってもらうという意味においても、末期がん患者への漢方治療は有効なものです。

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